横浜綜合法律事務所

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その他2017.10.04by YSLO

その他「民法改正の概要」

民法は私人間の法律関係を規律する一般法であり、物の売り買い、お金の貸し借り、賃貸借など日常生活を送る上でも、接する機会の多い法律です。

この民法は明治29年に制定され、その後親族法・相続法については全面的な改正がされたものの、上に挙げたような個人間の契約関係を規律する債権法に関しては、担保物権法等の部分的な改正を除き、120年以上もの間抜本的な改正はされてきませんでした。

そこで、民法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとする等の観点から、平成21年以降、民法改正について議論されてきました。
その後、平成27年3月31日、民法改正案が閣議決定されるとともに改正法案が国会に提出され、平成29年4月14日、衆議院にて可決されました。
今後参議院で可決されれば、改正民法が成立することとなり、今後3年以内に改正法が施行される見込みとなっております。

今回の民法改正は改正箇所が多岐に亘っており、実務上も抑えておくべき重要な改正部分が多くあります。
今回はそれら重要な改正部分の概要を、次回以降にその詳細についてご紹介していく予定です。

【1】消滅時効
現行民法では、原則的な時効期間を10年間とし、その他短期消滅時効(例えば、飲食店の飲食料は1年間、売買代金は2年間など)を定めていますが、改正法では、短期消滅時効は廃止され、一律の時効期間(債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間、権利を行使することができるときから10年間)が規定されることになります。
【2】法定利率
改正法案では、法定利率を現行法の5%から3%に引き下げた上で、変動制とすることとして、商事法定利率(6%)は廃止され、上記変動利率に一本化されることとなりました。
【3】保証
改正法案では、事業のために負担する借入を対象とする個人保証・個人根保証は、保証契約の締結前1か月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を確認しなければ(主たる債務者が法人で、保証人となろうとするものが取締役、議決権過半数保有者である場合や、主たる債務者が個人事業主であり、保証人となろうとするものが共同事業者等である場合には、公正証書は不要です)原則として無効とされます。
【4】約款
現行民法には規定のなかった約款について、定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの)において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体と定義し、定型約款に関する規定を明文化しました。
【5】意思能力
意思能力(自らの行為の意味を理解する能力)のない者がした契約が無効であるというルールは、民法の条文には明記されていないものの、判例上認められていました。
このルールについて改正法では明文化されることになりました。
【6】敷金
現行法には規定のなかった敷金について明文化するとともに、返還時期についても賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときとされこれまでの判例法理が明文化されることになりました。