トピック
Topic2014.02.22(sat)第35回 事務所研究会
澤田久代「事業清算に伴う諸問題」
榎本ゆき乃「遺産分割にまつわる諸問題」
- はじめに
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近時の横浜家庭裁判所における遺産分割事件の運用
平成24年4月に遺産分割専門部が創設されて以降の遺産分割事件(調停、審判)の実際の運用について、経験を踏まえて報告した。 -
使用貸借と相続
親子間等で土地建物を無償で利用させている場合も多いが、その場合、相続がなされると無償利用関係はどうなるのか、また、遺産分割にはどのような影響があるかについて、検討した。なお、このような場合、一部の相続人が長年無償利用してきたことについて他の相続人が不公平感を有している場合も多く、問題となりやすい。
- 使用借権の承継
本来、使用貸借契約においては借主の死亡により契約は終了する(民法599条)が、不動産においては、人の生活の基盤という特質があることから、例外として使用借権の承継が認められる場合があり、裁判例を紹介した。
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使用借権と特別受益
被相続人所有の土地を、長年無償で使用してきた場合、この使用借権は、生計の資本としての贈与として特別受益にあたり、更地価格の1~3割と評価されることがある。ただ、持ち戻し免除の意思表示が認められることも多いようである。
- 使用借権の承継
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相続開始後遺産分割までの間の不動産の管理・使用について
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一部の相続人が相続財産である不動産を占有している場合
明渡請求および金銭請求の可否について、判例を紹介して検討した。①居住用建物に②被相続人の承諾を得て同居していた場合などには、相続開始を始期として遺産分割時を終期とする始期付き使用貸借契約が成立するとして、金銭請求を否定した判例がある。
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共同相続財産である不動産から生ずる賃料債権の帰属について
考え方が分かれていたが、最高裁判例(平成17年9月8日)では、①共同相続財産である賃貸不動産から生ずる賃料債権は、遺産とは別個の財産であって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するとし、②遺産分割は、相続開始時に遡ってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないとされた。
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一部の相続人が相続財産である不動産を占有している場合
長瀬陽朗「社団医療法人の相続に関する法律問題」
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事案の概要
社団医療法人Q会の持分権者であったAを相続したXは、Q会に対していかなる権利を請求できるか。また、Q会としてどのような対応が採りうるか。
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医療法人についての概説
- 医事法の全体像
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医療法人の意義と種類
現在、約48,000件の医療法人があり、この発表のテーマとなる出資持分のある社団医療法人が約91%、出資持分のない社団医療法人が約8%となっている。
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社団医療法人の機関の概要
社員、社員総会、理事・監事、理事会、理事長
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医療法人の特徴(非営利性)
医療法の第5次改正と、残余財産の帰属先について
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出資持分の払戻請求権
- 出資持分とは
- 出資持分払戻請求権とは
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問題点
出資持分は会社の資本金と同様に、医療法人の建物、医療機器等の現物資産へと姿を変えており、出資持分の払戻請求を受けた医療法人内に、出資持分相当額のキャッシュがあるとは限らない。
その結果、場合によっては医療法人の存続をかけた紛争が生じてしまうことになる。
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出資持分の払戻請求権
- 出資持分とは
- 出資持分払戻請求権とは
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問題点
出資持分は会社の資本金と同様に、医療法人の建物、医療機器等の現物資産へと姿を変えており、出資持分の払戻請求を受けた医療法人内に、出資持分相当額のキャッシュがあるとは限らない。
その結果、場合によっては医療法人の存続をかけた紛争が生じてしまうことになる。
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出資持分払戻請求に関する裁判例
- 事案の概要
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平成18年2月24日 前橋地方裁判所判決(第1審)
社員が退社したときの純資産額を基準として、出資持分の払戻しを認めた。
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平成20年7月31日 東京高等裁判所判決(控訴審)
第一審を覆し、社員が出資した額のみの払戻しを認めた。
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平成22年4月8日 最高裁判所判決
控訴審を破棄し、出資持分については、社員が退社したときの純資産額を基準として払戻し額を計算すべきとしつつも、公益性・公共性の観点等に照らすと、持分払戻請求権の行使が権利の濫用にあたる可能性があるとして、事件を差し戻した。
- 上記判例の解説と評価
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対策
- 遺言の作成と遺留分対策
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出資持分のない医療法人への移行
- 移行手続
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問題点
- 持分権者の同意
- 贈与税の課税
吉田進一「インターネット社会に特有な法律実務に有益と思われる2、3の知識」
東京地方裁判所において民事保全事件を担当している民事第9部によれば、仮の地位を定める仮処分の半数以上をインターネット関係仮処分(発信者情報の開示、投稿記事の削除及び発信者情報の消去禁止の仮処分)が占めているということであり、また、いわゆるパソコン遠隔操作事件のように、発信者の特定が捜査上ないし刑罰権の存否を決定するうえで極めて重要となる刑事事件に関する報道をよく目にする昨今の状況を踏まえ、インターネット社会に特有な法律実務に有益と思われるいくつかの知見、プロキシサーバに関するものなど、の提供を試みた。
渡辺翔太「養育費・婚姻費用の算定に関する諸問題~特殊なケースへの対応~」
夫婦関係調整調停事件や婚姻費用分担調停申立事件で養育費・婚姻費用を算定するにあたり、現在の実務では、平成15年に発表された「養育費・婚姻費用算定表」が広く利用されており、双方の年収、子の人数及び年齢によって導かれた範囲の中で額が定められることが多い。
もっとも、「養育費・婚姻費用算定表」は、子が3人以下である、子が公立学校に通っている、子が2人以上いる場合は全ての子を権利者が監護している等、比較的多くみられるケースを想定して作成されているため、特殊な事情がある場合には「養育費・婚姻費用算定表」を直接用いて養育費・婚姻費用を算定することができない。
そこで、「養育費・婚姻費用算定表」作成の基礎となった養育費・婚姻費用の計算方法を明らかにした上で、それをもとに、例えば①子が4人以上いるケース、②子が2人以上いて権利者のみならず、義務者も子を監護しているケース、③義務者が再婚したケース、④子が私学に通っているケース、⑤権利者が居住する自宅の住宅ローンを義務者が支払っているケース等の特殊な事情がある場合における算定方法を発表した。
(発表者コメント)
われわれ弁護士が夫婦間の問題についてご相談を受けたり、委任を受けたりすると、「養育費や婚姻費用の額が相当であれば払う/受け取る意思があるものの、相当な額が分からないため、話し合いが成立しない」ということはよく見受けられます。
「養育費・婚姻費用算定表」をそのまま用いることができるケースかどうか、そのまま用いることができない場合はいくらが相当であるかという点について知りたい方は、一度ご相談下さい。
横浜綜合法律事務所では、研究会・セミナーを通じて最新の法律情報を受講者の皆様と共有させていただきます。
また、その時々に話題になったトピックや事件に関する情報なども、当該分野に明るい弁護士が中心となり、研究成果や所感を発表する場としても活用しています。