トピック
Topic成年後見・財産管理「成年後見制度と選挙権」
判断能力が不十分である人々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、介護サービスや施設への入所に関する契約を結んだりすることが難しい場合があります。ときには、自宅を安価で売却してしまうなど自己に不利益な契約であっても、その判断ができずに契約を締結してしまいかねません。そこで、判断能力が不十分な人々が損害を受けないようにするために、本人の判断能力を補い、支援するのが成年後見制度です。
そうであるにもかかわらず、これまでは、成年後見制度のうち「後見」が開始された本人については、公職選挙法の規定により、選挙権が制限されていました。
そこで、平成23年に、「後見」が開始された本人の選挙権を制限する公職選挙法の規定は選挙権を侵害し憲法違反であるとして、選挙権を行使しうる地位があることを確認する訴訟が東京地方裁判所に提訴されました。その後、さいたま、札幌、京都でも同様の訴訟が提起されました。
そして、平成25年3月14日に東京地方裁判所は、「後見」が開始された本人の選挙権を制限する公職選挙法の規定を違憲と判断し、選挙権を行使しうる地位を確認する判決をしました。
この判決は、「後見開始の許否の際に判断される能力は・・本人保護の見地から『自己の財産を管理・処分する能力』を判断することが予定されているのであって・・財産管理能力の有無や程度についての家庭裁判所の判断が・・主権者であり自己統治をすべき国民として選挙権を行使するに足る能力があるか否かという判断とは、性質上異なるものであることは明らかである」と述べ、結論として、「後見」が開始された本人の選挙権を制限する公職選挙法の規定を違憲と判断したのです。
その後、平成25年5月に、「後見」が開始された本人の選挙権を回復すべく、公職選挙法の一部を改正する法律が成立、公布されました。
これにより、平成25年7月1日以後に公示・告示される選挙について、「後見」が開始された本人は、選挙権・被選挙権を有することになります。