横浜綜合法律事務所

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個人の債務整理2013.12.13by YSLO

個人の債務整理「セーフティネットの周知-社会福祉資金貸付制度と社会福祉協議会」

いわゆる総量規制が導入された改正貸金業法が施行されて以降も、政府は多重債務問題の解決に一定の尽力をしているようで、平成23年8月には「多重債務者相談の手引き ~『頼りになる』相談窓口を目指して~」(以下「手引き」といいます。)が金融庁・消費者庁により作成されています。

ところで、セーフティネットは、サーカスの綱渡り等において、演技者が万が一落下した際に、その安全を確保するために設置されるネットの意味で用いられることもありますが、個人や社会が抱えるリスクが顕在化した際に、その影響を回避ないし小さくするための仕組みの意味で良く用いられます。
残念ながらいわゆる多重債務を負うに至った個人に対しては、その多重債務を整理することが前提とされることが多いでしょうが、生活保護の制度や生活福祉資金貸付制度がそのセーフティネットの主要なものとなりましょう。

ところで、この社会福祉資金貸付制度(以下「本制度」といいます。)とは、必要な資金を他から借りることが困難な低所得者などが、安定した生活を送れるよう、都道府県の社会福祉協議会が資金の貸付けと必要な相談や支援を行うものです(http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201001/3.html)。本制度は、手引き34頁によれば、「『顔の見える融資』(相談者との顔の見える関係を構築することによって、相談者のリスクを下げる地道な努力としての、丁寧な事情聴取、具体的な解決方法の相談、事後のモニタリングを前提として、返済能力が見込まれ、多重債務問題の解決に資する場合に限って、低利の貸付けを行うこと)」、すなわち「セーフティネット貸付け」の一つですが、感覚的にはその存在がそれほど広く知られていないような気がします。
もちろん、「『相談者の』リスクを下げる」といっても、その「リスク」には、相談者の経済的なものに関するリスクだけでなく精神面を含めた健康に関するものや、「社会の」経済・雇用情勢に関するものも含まれますから、それほど簡単な話ではありません。そして、本制度は、「返済能力が見込まれ」る場合に限って貸付けを行う建前ですから(「貸付け」ですから当たり前ですが)、「リスクを下げる」ことが見込まれない、つまり貸付けを受けられないケースも少なくないでしょう。
とはいえ、「『相談者の』リスクを下げる」ことにとても熱心になって下さる社会福祉協議会の職員の方や連携する社会福祉法人の方に出会ったことも実際に多いですから、本制度や社会福祉協議会の存在をもっと周知させることは、多重債務問題の解決に極めて有用ではないかと思ったりします。社会福祉協議会等のリソースの限界もあるのでしょうが。