横浜綜合法律事務所

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企業法務2020.03.24by YSLO

民法(債権法)改正に伴う会社法・商法の改正

令和2年4月1日から、新しい民法(債権法)が施行されます。この民法改正に伴う、会社法・商法も一部が改正されることになりますので、以下で概要をご案内いたします。

【法定利率の改正】
従前、民法における法定利率は年5%とされており、他方で、商法514条では、商行為によって生じた債務の法定利率を年6%としていました。
今回の民法改正によって、法定利率が年3%(3年ごとに見直し)とされたことに伴い、商法514条の規定は廃止され、商行為によって生じた債務についても、民法と同じ法定利率とされることになりました。

【時効の改正】
民法改正によって、債権の消滅時効が原則5年とされるのに伴い、従前から5年の消滅時効を定めていた商法522条の規定が削除されることになりました。

【詐害的営業譲渡(会社分割)に関する改正】
民法改正によって、従来は「行為の時から20年」とされてきた詐害行為取消権行使の期間制限(除斥期間)が、「行為の時から10年」となりました。
それに伴い、商法18条の2にある詐害的営業譲渡に関する履行請求の期間制限についても、「効力が生じた日から20年」であったものが「10年」となりました。
また、同様に、詐害的会社分割の効力に関する会社法759条6項、761条6項の規定も「効力発生日から10年」に改正されました。

【意思表示(錯誤)に関する改正】
民法の改正によって、錯誤による意思表示の効果が、「無効」ではなく「取り消すことができる」ものとされました。
それに伴い、従前は株式引受けに関して「無効」の主張を制限していた会社法51条2項、102条6項、211条2項も、「取消しをすることができない」と改められました。

【利益相反取引規制の改正】
民法108条1項では、自己契約及び双方代理を禁止しています。
民法の改正によって、自己契約及び双方代理を禁止するとともに、それに違反する行為は無権代理行為であることが明文化されました。
民法108条2項では、利益相反行為を禁止しており、同項は新設された規定です。
民法の改正によって、形式的に自己契約及び双方代理に該当しない行為であっても、代理人と本人の利益が相反する行為については、無権代理行為であることが明文化されました。
 
会社法356条1項2号及び3号は、取締役の利益相反取引を規制しています。2号では直接取引を規制し、3号では間接取引を規制しています。
同条項では、取締役は、会社の承認(株主総会又は取締役会の承認)を受ければ、利益相反取引をすることができると規定されています。
取締役が会社の承認を受けて利益相反取引をした場合、民法108条違反になってしまうことから、その適用を排除するため、会社法356条2項では、会社の承認を受けた利益相反取引については、民法108条は適用しない旨が規定されています。
旧法では、会社法356条2項において直接取引(会社法356条1項2号)のみ民法108条の適用を排除していましたが、民法108条2項の新設により、間接取引(会社法356条1項3号)についても規制が及ぶことになったため、新会社法356条2項において間接取引(会社法356条1項3号)においても民法108条の適用が排除される旨が明文化されました。