トピック
Topic交通事故「後部座席のシートベルト」
交通事故を起こした際に、被害者がシートベルトを装着していなかったことを理由に過失相殺が認められることがあります。
もちろん、どのようなケースでも過失相殺が認められるわけではなく、被害者がシートベルトをしていたならば損害(怪我の具合)が軽度に収まった可能性が高いケースにおいて、過失相殺が認められることがあります。
過去の裁判例においても、同一事故においてシートベルトを着用していた被害者とシートベルトを着用していなかった被害者とで怪我の程度が異なった事例などにおいては、シートベルトを装着しなかったことが損害の拡大に影響したとの判断から、シートベルトをしていなかった被害者について、過失相殺を認めているものが見られます。
一方で、運転席や助手席ではなく、後部座席においてシートベルトを着用していなかったケースでは、過失相殺を認めなかった裁判例もあります(東京地裁平成25年7月16日判決)。
しかし、その判決理由をよく見ると、被害者がタクシーの乗客であったことに加えて、事故当時(平成20年5月30日)には未だ後部座席におけるシートベルトの着用が義務化されていなかったことなどが挙げられています。
この点、平成20年6月の道路交通法改正により、後部座席においてもシートベルトの着用が義務付けられましたので、それ以降に発生した交通事故においては、後部座席でシートベルトを着用していなかったことを理由に損害が拡大したような場合には、過失相殺が認められる可能性が高いといえるでしょう。
実際に、道路交通法の改正後に発生した交通事故において、助手席でシートベルトを着用していた被害者に怪我がなかった一方で、後部座席でシートベルトを着用していなかった被害者が怪我をした事案などについて、後部座席の被害者により大きな過失相殺を認めた裁判例も出てきています(東京地裁平成25年2月26日判決等)。
過失相殺が認められてしまう可能性があるからというだけではなく、怪我の発生・拡大を防ぐためにも、どの座席においてもしっかりとシートベルトを着用することを心掛けましょう。