トピック
Topic定期金賠償
交通事故において、後遺障害が残存した場合、逸失利益(労働能力が一部乃至全部喪失したことにより失った、本来得られたであろう収入等の利益)、また将来の介護費等が、損害として認められることがあります。
これらは将来の損害ではありますが、これまでの賠償実務では、「一時金賠償」、すなわち、これらの損害も請求者の請求時にまとめて積算され(将来の損害分を現時点で賠償として受領することとなるため、その期間の利息相当分は差し引いて(中間利息控除)、現在価値に引き直す)支払われるのが通常でした。
紛争の一挙解決という意味でも、一時金賠償は合理性のある賠償方法と考えられています。
もっとも、令和2年7月9日、最高裁にて、交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害による逸失利益につき一時金ではなく定期金による賠償(今後○年○月まで、毎月○円を支払う旨)を求めている場合において,これを認め得る旨の判断がなされました。
定期金賠償は、上記の中間利息控除の点では、一時金賠償よりも総受領額が増え、一見、請求者にメリットがあるとも思われますが、他方で、結局将来長きに渡り、被請求者側との関係が続くこと、被請求者や被請求者側保険会社の経済状況の悪化のリスクがあること、またその後の事情変更(数年して、請求者が従前より回復している等)による減額のリスクがあること等、考えなければならない問題も複数あります。
支払を行う被請求側(主には保険会社であることが多い)としても、支払管理や、請求者の状況を引き続き把握し、必要に応じて事情変更の申立を行う等、新たな管理・調査体制の検討が必要となることとなります。
事故当事者双方にとって、定期金賠償という方法が有用か、請求時の選択肢として今後一般化していくのか、と言う点では、上記のとおり微妙なところもありますが、本判例は、交通事故損害賠償実務に大きな影響を与え得るものであり、今後更なる事例の蓄積に注目していきたいと思います。