横浜綜合法律事務所

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コラム2021.06.25by 鶴井 迪子

こどもの目

水族館に、子供を連れて行った時のことである。
親としては、せっかくなら、海の生き物たちが泳ぎ回る世界を楽しんでもらおうと思い、ほら見て、と大きな水槽の中を指差す。
ところが、子供は館内でごった返す人間たちの様子を、イワシの群れやエイを見るのと同じように面白がるし、脇の通路にひっそりと佇む募金用のアシカの置物を興味深そうに触って回り、水槽の中の本物のアシカと同じくらいの時間をかけて楽しむ。
目玉と謳われるショーへ向かう途中も、通路の電飾や変わった床材などに目が輝き、一向に目的地まで到達しない。周りの大人たちは当然、電飾や内装は脇役と分かっているので、効率的に、水槽から水槽へと目を移し進んでいく。
もっと楽しいものがあっちにあるよ!と子供を抱きかかえて急ぐ親の気持ちも、とてもよく分かるが、水槽の中の生き物を見て楽しむのが水族館、といったことなど、彼には全く関係ないのだと気づき、同時に、我々大人は対価の有無や提供側の思惑・演出で、楽しむべき対象、情報を得る枠を予め決めてしまっているのだなと、少しはっとさせられた。
彼は、ショーで拍手喝采を浴びるイルカたちにも、通路の電飾にも、同じように興味を向け、何かを発見し、楽しみ、学んでいるのだろう。
一旦、子供のような、フラットな目で。
仕事でも、日常生活でも、忘れずにいたいと思う。