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コラム2014.10.02
湯沢 誠「チャレンジシステムと裁判制度」
私は松井秀喜がニューヨークヤンキースに移籍して以来、MLBの大ファンである。野手は松井以外ではなかなかいい成績が残せていないが、投手はダルビッシュ、田中将大を始めとして、多くの選手が素晴しい成績を残しており、週末はテレビにかじりつきである。
MLBでは今年からチャレンジ制度と言って、審判の判定に不服がある場合、1試合で2回に限り異議を申し立てることができる制度を導入した。野球場からビデオ映像を機構に送り、そこで第三者である判定員が判断するという仕組みだ。
このシステムの導入にあたっては侃侃諤諤の賛否両論があった。賛成論は何より客観的・公平な判断が下されるというものであり、反対論は神聖・絶対な存在であるはずの審判の権威が損なわれるというものであった。
実際にこのシステムが導入されてみると、異議の申し立てに対して機構から速やかなジャッジがなされ、ゲームのスムーズな進行におおいに役立っていると言える結果になった。
例えば、これまでしばしば見られたジャッジに不服な監督からの猛抗議、時には暴力→退場宣告というシーンが全く姿を消した。チャレンジシステムの導入は成功したと言えよう。
弁護士である私から見ると、チャレンジシステムの成功の理由は、まさに裁判制度への信頼と同じものと思われるのである。即ち当事者間の考えに対立があり、双方の話し合いによっても解決できない場合に、当事者以外の第三者が証拠(ビデオ)を元に客観的にジャッジするという仕組みにおいて、両者は基本的に同じ構造であると思われるのである。