新型コロナウイルスに関する緊急相談窓口

事業運営・取引等の問題じぎょううんえい・とりひきとうのもんだい

※本ページは令和2年5月8日時点の情報に基づいて作成しています。

(1)契約の履行不能・遅延・解除について

新型コロナウイルスの影響によって、契約上の債務の履行が遅れたり、不可能になってしまうことがありえます。例えば、感染者の発生により工場が一時的に閉鎖され、商品の製造が出来なくなってしまったようなケースです。その場合、債務を負っている側はどのような責任を負うことになるのでしょうか。通常であれば、履行の遅れや不能は、債務者側に帰責性(責任を負うべき事情)のあることが多く、契約を解除されたり、債権者から損害賠償を求められたりするなど、その不履行の責任を負うことになります。しかしながら、債務者に帰責性がない(不可抗力による場合を含む)履行の遅滞や不能は、原則として、債務者はその責任を負うことはありません。

例えば、地震などの災害による履行の遅滞や不能は、債務者が責任を負わない場合があります。そして、現状、新型コロナウイルスによる影響は、地震などの災害に匹敵するものとなっていると考えられます。したがって、その影響による履行の遅延や不能は、債務者に帰責性を問えない場合があると考えられます。もっとも、帰責性の有無(不可抗力であるかどうか)は、決して一概に定まるものではなく、その契約の内容(災害等の際についての定めがあるかどうか)や、債務の種類、新型コロナウイルスの影響の大小、履行遅滞・不能を回避できた可能性の大小といった様々な要素が考慮されて判断されることになります。

なお、金銭の支払い債務については、不可抗力による場合でも、遅滞の責任を免れないとされているため(民法419条3項)注意が必要です。もっとも、金融機関からの借り入れについては、返済猶予等について迅速かつ柔軟に対応するよう、金融庁から各金融機関への要請が出されています。(※1)

まずは借入先の金融機関へ相談されることをお勧めします。
また、事業基盤が弱く、影響を受けやすい下請等中小企業や、個人事業主・フリーランスとの取引においては、経済産業省と公正取引委員会から、納期や支払時期の変更等について柔軟な対応を求める要請が出されています。これらの要請は、直ちに法的な効果を生じるものではありませんが、法的な判断に影響を与える一要素となる可能性はあると思われます。

(2)賃貸借契約(賃料減額、支払猶予)について

新型コロナウイルスの影響によって、賃貸物件のテナントから賃料の減額・支払猶予を求められている、あるいはオーナーに対して賃料の減額・支払猶予を求めたいという相談が増えています。
また、国土交通省からは、不動産関連団体を通じて、賃貸業を営む事業者に対し、テナントの賃料の支払いの猶予に応じるなど、柔軟な措置の実施を検討するよう要請がなされています。(※2)

しかしながら、この要請は、あくまでも任意の協力を求めるもので、個々の賃貸借契約関係に法的な効果が生じるものではありません。したがって、新型コロナウイルスの影響には様々なものがあると思いますが、原則としては、個々の契約が優先され、契約書上に特段の規定がなければ、賃料の減額に応じる必要はないということになります。ただし、オーナーが支払猶予に応じなかったとしても、賃料の滞納を理由として直ちに賃貸借契約が解除できるわけではありません。賃貸借契約の解除のためには、賃貸人と賃借人との信頼関係が破壊されていることが必要となります。

信頼関係が破壊されているかどうかは、賃料不払前後の様々な事情が考慮されますが、一般的には、新型コロナウイルスの影響によって一時的に賃料を滞納したとしても、それだけでは信頼関係は破壊されていないと判断されることが多いと思われます。テナントの立ち退きが長期的な賃料収入の減少につながることもあることを踏まえると、結局のところ、賃貸人と賃借人との話し合いによって円滑な解決を図るのが望ましいと思われます。

他方で、賃貸人側の判断によってテナントの入居する物件を休業させた場合や、感染症に対する法令上の措置として建物の使用が禁止されたような場合は、賃借人に帰責性なく、あるいは不可抗力により物件が使用収益できなくなっていますので、原則として賃料が免除されることになります。そして、新型コロナウイルスの影響が一時的なものに留まらず、長期的に周辺不動産の賃料相場全体に影響を及ぼし、現在の賃料が不相当となったような場合には、借地借家法32条による賃料減額の請求ができる可能性もあります。

(3)株主総会の運営について(開催日程の変更、実施方法等)

毎年6月頃は定時株主総会が多く開かれる時期ですが、新型コロナウイルスの感染が収まらない通常通りに定時株主総会を開催してよいものか悩まれる事業主の方も多いかと思われます。まず会社法では、定時株主総会は、「毎事業年度の終了後一定の時期」に招集しなければならないとされていますが(296条)、具体的な期限までは定められていません。また、会社の定款には、「毎事業年度の終了後3か月以内に招集する」と定められていることが多いかと思いますが、このような定款の定めがある場合でも、天災その他の事由によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで、その時期の開催を要求する趣旨ではないと考えられます。(※3)
したがって、例年とは異なる時期に定時株主総会開催することも許容されると考えられます。また、オンラインのみで株主総会を済ますことはできないと考えらえますが、会場で現実に株主総会を開催しつつ、オンライン中継で株主の参加を認める方法もあります。(※4)
予定されている決議事項や、出席が想定される株主の人数等を踏まえて、安全な開催方法・時期を検討する必要があるところです。

※本ページは令和2年5月8日時点の情報に基づいて作成しています。

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