横浜綜合法律事務所

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コラム2020.08.31by 左部 明宏

仰げば尊し

先日高校のクラス会が開催された。クラスメイトは、それなりに年齢を重ねていたが、話し始めると時間が瞬時に高校生当時に遡ってしまうのが不思議である。このクラス会で私が最も嬉しかったのは、担任のY先生と久しぶりにお会い出来たことである。

高校生の私は決して優等生ではなかった。ラグビーをするために通学していた様なもので、遅刻の常習犯。授業はサボるし、興味ある科目しか勉強しなかったので、成績は乱高下。斜に構えているところがあり、とても扱いにくい生徒であったと思う。そんな私をY先生は気にかけてくれてはいたが、特段注意することなく、「お前は大器晩成だから」といって自由にさせてくれていた。今となれば、それは忍耐のいることだと容易に理解できる。二十歳になり高校生活の不徳を反省し、十年間は将来の自分のために投資をしようと決心して勉強を始め、その後司法試験を受けることになったが、当時の司法試験は合格率数パーセントの超難関。この受験勉強は本当に辛かったが、心が折れそうになったとき、ふとY先生の「お前は大器晩成だから」という言葉を思い出した。高校時代、私を信頼し自由奔放な学生生活を許してくれた先生の信頼に応えたい、そんな気持ちが受験生活を支える一助となっていた。

二十歳のとき同窓会でお会いして以来、Y先生とは35年振りである。先生に、現在弁護士であること、数年前に横浜国大のロースクールで教鞭を取っていたこと、司法研修所の民事弁護教官として後進の指導をしていたこと、今は法務省から委嘱され公務に携わっていることなどを報告し、型に嵌めようとせずに見守ってくれていた先生の度量に感謝の気持ちを直接伝えることが出来た。

高校生の当時はなんて恥ずかしい歌であると思っていたが、今は素直に唱えることが出来る。「仰げば尊し、わが師の恩」である。