横浜綜合法律事務所

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コラム2019.02.04by 新関 拓也

新関 拓也「家族信託のすすめ」

家族信託は、自分の財産を信頼できる家族に託し、その預かる目的に従って管理や処分等を代わりにしてもらう制度です。
財産を預ける人を「委託者」、財産を預かる人を「受託者」、預けた財産から利益を得る人を「受益者」と言います。
家族信託は、①契約、②遺言、③信託宣言の3つの方法により行うことができます。
①契約は、委託者と受託者の間で信託契約を締結することで成立します。
②遺言は、委託者が単独で遺言書を作成するものです。委託者が死亡した時に信託が成立します。
③信託宣言は、委託者自身が受託者となる自己信託と呼ばれるもので、委託者兼受託者が単独で行うものです。公証役場で公正証書を作成することで成立します。

家族信託の利用を検討するケースとして、以下のような例が挙げられます。

①認知症などによる判断能力の衰えに備えたい
自分が認知症などで判断能力が低下する前に、財産の管理・運用を家族に託しておきたいというケースです。
例えば、賃貸物件を所有する親(委託者)が、子を受託者、自分を受益者とする信託契約を締結する例があります。この場合、賃貸物件の修繕・建替・売却等は子が行い、家賃や売却代金等は親が得ることが可能となります。
家族信託は、自分に判断能力があるうちに信頼できる家族に財産管理を任せることができ、成年後見制度とは異なり、柔軟な財産の管理・運用ができることがメリットです。

②自分の相続人の次の承継人まで決めておきたい
自分の死後に財産を承継した相続人が亡くなった後の財産の承継人まで決めておきたいというケースです。
例えば、子どもがいない夫婦で、夫が自分の死後は妻に財産を承継させたいが、妻の死後は交流のない妻の親族ではなく、自分の兄弟姉妹に財産を承継させたいという例があります。この場合、夫が委託者となり、自分の兄弟姉妹を受託者、当初の受益者を自分、自分の死後の受益者(第2受益者)を妻とし、妻の死後に信託契約が終了し、残余財産を兄弟姉妹が承継する内容の信託契約を締結することになります。
家族信託では、遺言書と異なり(遺言書で指定できるのは自分が亡くなった時の一次相続のみ)、柔軟な相続の仕組みを作れることがメリットです。

③障害を持つ子に財産を残したい
障害を持つ子がいて、自分の死後、その子が一人で生活していけるのか不安があるから、その子に財産を残したいというケースです。
例えば、障害を持つ子の親が委託者となり、信頼できる親族や福祉施設を受託者、障害を持つ子を受益者とする信託契約を締結する例があります。この場合、財産は親族や福祉施設が管理し、その子の生活を支えることが可能となります。なお、受託者を監督する信託監督人に弁護士が就任することも可能です。

家族信託は、上記の他にも事業承継や相続時の紛争予防等のために活用も可能ですので、詳細については、是非、当事務所にご相談ください。