横浜綜合法律事務所

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遺言・相続2016.10.21by YSLO

遺言・相続「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」

平成28年6月21日、法制審議会民法(相続関係)部会において、「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」が取りまとめられ、同年7月12日から同年9月30日までの間、パブリック・コメントの手続が実施されました。
同中間試案の内容は、第1「配偶者の居住権を保護するための方策」、第2「遺産分割に関する見直し」、第3「遺言制度に関する見直し」、第4「遺留分制度に関する見直し」、第5「相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」に、大きくまとめられています。

第1「配偶者の居住権を保護するための方策」は、配偶者の法定相続分が2分の1(遺留分は4分の1)であるために、めぼしい遺産が被相続人の自宅(不動産)しかないような場合、同不動産に同居してきた配偶者が、それ以降も引き続き使用することができるような方策が必要ではなかろうか、という問題意識に基づく議論です。

第2「遺産分割に関する見直し」は、配偶者の相続分が、その貢献と比較して少ないのではないかという問題意識に基づく議論です。すなわち、離婚した場合は、婚姻期間中の夫婦の財産の増加につき、夫婦それぞれが2分の1ずつ貢献したと認められる場合が多いのですから、遺産についても、婚姻期間中に増加したものの2分の1は配偶者の潜在的持分とみれば、配偶者の実質的な相続分は極めて小さいものになることがあるとの帰結を修正しようとするものです。

さらに、預貯金などの可分債権の遺産分割における取扱いも見直されようとしています。現行では、相続人全員が同意しない限り、預貯金は遺産分割の対象とはなりません。

第3「遺言制度に関する見直し」は、自筆証書遺言につき、すべてを自署するのは大変なので、その一部につき、パソコン等で作成することを認めようとするものです。また、遺言の保管機関を創設すべきではないかとの議論もございます。

第4「遺留分制度に関する見直し」は、遺留分権利者が権利行使した場合、遺贈または贈与の目的物につき当然に共有状態が生じる不都合を、その行使によって原則として金銭債権が発生することとして、回避しようとするものです。

第5「相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」は、例えば、被相続人の子の配偶者が、被相続人を献身的に療養看護した場合でも、遺言等が無い限り、同人が遺産を受け取ることはできませんので、何らかの手当てが必要ではないかとの議論です。

実際の改正はまだ先のこととしましても、社会にかなり大きな影響を与える内容となりそうですから、今後の動向が注目されます。