横浜綜合法律事務所

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不動産・借地借家2014.08.27by YSLO

不動産・借地借家「マンション騒音の問題について」

マンションの騒音問題について相談を受けることがありますが、その法律問題について検討したいと思います。

Q1 私の居住しているマンションはフローリングの床になっていますが、椅子や机を移動したときの音、物を落としたときの音、子どもが飛び跳ねたときの音など階下の居住者に迷惑をかけていないか心配です。もし、仮に、法的に問題になるとしたら、どのようなことが考えられますか。
A1 騒音により被害を受けている者からの、①騒音により生じた損害賠償請求、②騒音を止めることを目的とする差し止め請求が考えられます。
そして、上記請求が認められるためには、受忍限度を超える違法性が騒音を発生させた側にあるのか否かが問題となります。日常生活を送る際、通常発生する音について、不快だからといってすべてが損害賠償請求や差し止め請求の対象となるのでは、社会生活を営むことができなくなりますから、受忍限度という、客観的にみて我慢の限度を超える音であると認められた場合に限って、違法性が認定され、損害賠償請求あるいは差し止め請求が認められることになると思います。差し止め請求が認められるには、損害賠償請求が認められる以上に違法性の程度が高い事情が必要かと思います。
ちなみに、下級審判例ですが、絨毯張りだった床をフローリング床にしたことにより、騒音が4倍になり、早朝深夜にわたる騒音も度々あったという事案について、受忍限度を超えているとして、慰謝料75万円を命じたものがあります(東京地裁八王子支部平成8年7月30日判決)。また、子どもが廊下を走ったり飛んだりする音が受任限度を超えるとして、音のレベルが50dB~65dB程度のものが多く、午後7時以降、時には深夜にも及ぶことがしばしばあったことを認定し、慰謝料30万円等の支払を認めたものがあります(東京地裁平成19年10月3日判決)。
Q2 私の居住しているマンションはフローリング床であり、椅子を少し移動したり、物をたまに落としたりする程度なのですが、階下の居住者から音がうるさいといった苦情があまりにも多くて困っています。私は音を極力出さないようにしており、日常生活を送るうえでやむを得ない程度の音しか出していないと思っています。しかし、ここ1年間、事あるごとに、階下の居住者が、天井を10分~1時間にわたって叩いたり、深夜早朝に数十回抗議電話をしたり、数十回パトカーを呼んだりすることもあり、私の方が精神的に参っています。どうしたらよいでしょうか。
A2 階下の居住者の生活騒音を理由とする抗議行動により、逆に、精神的苦痛を伴う損害を被っているのであれば、その抗議行動が常軌を逸しているものとして、損害賠償請求が認められる可能性があると思います。また、階下の居住者が主張する騒音損害が受忍限度を超えていない騒音であれば、階下の居住者の損害賠償請求があったとしても否定されると思われます。
Q3 私はマンションの管理組合の理事長をしている者ですが、マンション1階にカラオケスタジオがあり、深夜に亘って騒音があるので、何とかしたいのですが、方法はありますか。
A3 騒音の程度がマンション居住者の共同の利益に反する場合は、建物の区分所有等に関する法律57条による差止請求や同法58条に基づく使用禁止請求が可能です。
実際、ご質問のような案件で、区分所有者の共同の利益に反するとして、夜間の一定時間帯のカラオケスタジオとしての使用禁止が認められております(東京地裁平成4年1月30日判決)。