トピック
Topicジグソーパズルの思い出
30年以上前、あるジグソーパズルを楽しんだ。遠くにきれいな山々、緑あふれる丘陵、白い教会、右側には滝が流れ落ちているといった美しい風景のジグソーパズルである。兄から買ってもらったものだった。
大学受験の結果発表日。大学まで合否を見に行った。当時大学生だった兄がなぜかその日だけ一緒に行ってくれた。自分の名前を発見し、兄は自分のことのように喜んでくれた。私は、自分が合格したこともそうだが、兄がとても喜んでくれたことが嬉しかった。そして、合格祝いに好きなものを買ってくれる、と言ってくれた。私は、ジグソーパズルが欲しいと言い、どこかの店に行き、気に入った美しい風景のジグソーパズルを選んだ。
それを完成させ、額に入れて、私の部屋の机の前の壁に長いこと飾っていた。しばらく後、その壁の主は、当時付き合っていた人(後の夫)から贈られたデュフィの花の絵のポスターに代わった。部屋には他に飾れる壁がなかったためか、おそらくそれを機に、件のジグソーパズルは兄の部屋に飾られることになった。その当時兄は地方に勤務していて実家にはいなかったように思う。今思えば、デュフィの花がジグソーパズルを押しのけた形になったようで、申し訳ない気もする。
ジグソーパズルを買ってもらってから25年ほど経ったころか、その美しい場所がスイスのとある村であることを知った。スイス旅行を計画していたら、なんとジグソーパズルと同じ風景を見つけたのである。ぜひ、その場所に行きたい、行かなければ、と思い、場所を調べ、とある小さな駅で降りて、同じ景色が見える場所を探し歩き、たどり着いた。感慨深かった。帰国後、その話を兄にした。喜んでくれると思って、「聞いて聞いて・・」と前のめりに話をした。しかし、当の兄は、私にジグソーパズルを買ってくれたこと自体を忘れていた。「そういえば、そういうジグソーパズル部屋にあったね。」と。
件のジグソーパズルは実家の兄の部屋に今も飾ってあり、デュフィの花は私の今の家の寝室に飾ってある。